VAR & プロトコル ジュニア年代の理解 — 介入できる 4 事象、APP (Attacking Possession Phase)、選手の振る舞い方を完全解説
VAR (Video Assistant Referee) は 2018 W 杯で導入され、J1 でも 2020 年から運用。育成年代の選手は将来必ず VAR 環境でプレーするため、ルール理解は必須。本記事では VAR が介入できる 4 つの事象 (得点・PK・退場・人違い)、APP (Attacking Possession Phase) の概念、On-Field Review (OFR) のチェック時間、選手の振る舞い方 (抗議・アピール・チェック中の動き) を実例とともに解説する。J1 試合観戦・自身のプレー両方で役立つ完全ガイド。
VAR とは — 4 事象に限定された介入システム
VAR は審判補助システムで、4 事象のみに介入。それ以外のジャッジは VAR の対象外。
| # | 介入事象 | 例 | 判定変更頻度 |
|---|---|---|---|
| 1 | 得点判定 | オフサイド / ハンド / ファウル見逃し | 高 (60%) |
| 2 | PK 判定 | PK 与えるべき / 与えるべきでない | 高 (50%) |
| 3 | 退場判定 | 直接レッドカード相当の重大ファウル | 中 (30%) |
| 4 | 人違い | 警告 / 退場対象の選手間違い | 低 (5%) |
中盤のファウル見逃し等は VAR 対象外。VAR は「主審の明白な誤審 (Clear & Obvious Error)」のみ修正
VAR が介入できる 4 事象
(1) 得点判定 (オフサイド・ハンド・ファウル等の見逃し)、(2) PK 判定 (PK 与えるべき/与えるべきでない)、(3) 退場判定 (直接レッドカード相当の重大ファウル)、(4) 人違い (警告・退場対象の選手間違い)。これ以外、例えば「単なるファウル見逃し」は VAR 介入対象外。
VAR が介入しないケース
中盤のファウル見逃し、コーナーキック与えるべきだったか、スローインの方向違い、イエローカード対象の判定 (アクシデンタルな反則) — これらは VAR 対象外。VAR は「主審の明白な誤審」を修正するもので、グレーゾーンの判定には介入しない (Clear and Obvious Error 原則)。
APP (Attacking Possession Phase) の概念
得点シーンの直前何秒前まで遡って判定するかのルール。「攻撃側がボールを保持し続けた時間」を APP として遡及対象とする。例えば、攻撃側が CK を獲得 → スローインで繋ぐ → ゴール の場合、APP 内の CK が誤判定だったら得点取り消し。攻守入れ替わるとリセット。
On-Field Review (OFR) — チェックから判定までのプロセス
VAR チェックがどう進むか、何秒かかるか、選手はその間何をすべきか。
Phase 1: サイレントチェック (10-30 秒)
得点 or 重要シーン直後、VAR 室の VAR 審判が映像を確認。選手・観客には何も告知されず、プレーは続行される (またはセットプレーで待機)。約 70% のシーンはこのフェーズで「介入不要」と判断され、何も起きずに進行する。
Phase 2: VAR 介入推奨 → OFR 開始 (30 秒-2 分)
VAR が「明白な誤審あり」と判断したら、主審にイヤホン経由で連絡。主審がピッチ脇のレビューモニターで映像確認 (OFR)、長方形ゼスチャー (TV ボックス) で OFR 中であることを示す。
Phase 3: 最終判定発表
主審が判定を変更/維持を発表。スタジアムでアナウンス + リプレイ映像放映。チェック開始から最終判定まで平均 90 秒。長引くと 3-5 分かかるケースも。
選手の振る舞い方 — チェック中の正しい動き
VAR チェック中の選手の振る舞いで、警告 + 退場リスクが変わる。
やってはいけない 4 つの行為
(1) 主審を取り囲んで抗議 (チーム全体での囲み = チーム警告対象)、(2) レビューモニターに走り寄って覗き込む (退場対象)、(3) TV ボックスゼスチャーを真似て要求 (警告対象)、(4) 判定変更後に過剰抗議 (警告 + 試合後追加処分)。これらは IFAB ガイドラインで明確に処罰対象。
推奨される 3 つの振る舞い
(1) チェック中は所定位置に戻り、水分補給 + 戦術確認、(2) 主審 1 名 (キャプテン推奨) が落ち着いて質問、(3) 判定発表後は速やかにプレー再開準備。冷静さがチームの追加カード回避に直結。
アピールの効果的なタイミング
VAR チェックが始まる前 (得点 or 反則発生直後) に冷静にアピールするのが最も効果的。主審が VAR に「介入要請」を出すきっかけになる。後からの抗議は VAR 判定確定後のため無意味、かつ警告リスク。
育成年代への影響 — VAR がない試合でも意識すべきこと
ユース年代の試合に VAR はないが、プロ試合の VAR 文化を理解しておくことが将来役立つ。
1: 「審判の判定をそのまま受け入れる」習慣
VAR 文化は「最終的に審判の判定が絶対」を強化した。プロも VAR 後の判定に従う。育成年代から「審判への過剰抗議をしない」習慣を身につけることが、将来プロ環境での適応に直結。
2: シミュレーション (ダイブ) は VAR で必ずバレる
プロでは VAR でシミュレーションが必ず露呈し、警告 or 退場が増加。育成年代からシミュレーション習慣がついた選手はプロ昇格時に苦労する。「誠実なプレー」が長期キャリアで最も価値ある。
3: 攻撃時のオフサイドラインを意識する
VAR 環境では「数センチのオフサイド」が画像解析で正確に判定される。育成年代から「オンサイドラインギリギリ」のポジショニングを意識する選手は、プロ昇格時に APP 内のオフサイドで得点取消されるリスクを減らせる。
参考文献
- [1] IFAB (International Football Association Board) (2024). “Video Assistant Referee (VAR) Protocol” IFAB Laws of the Game.
- [2] Lago-Peñas C., Lago-Ballesteros J., Rey E. (2011). “Differences in performance indicators between winning and losing teams in the UEFA Champions League” Journal of Human Kinetics.
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最終更新: 2026-05-19 ・ Footnote編集部